病理学は、 主として形態解析及び基礎医学的手法により、病気の発生機序や病態を解明し、その治療法を探索する基礎病理学と病理解剖や患者さんから切除された臨床検体を病理組織学的に診療することを通して、各診療科の先生の診断・治療に寄与する臨床病理学より構成されています。病理診断科学および病理学は、基礎医学を追究すると同時に、全身の網羅的な病理診療及び病理学研究をする上で、全診療科の魅力を伝えられる分野であり、視覚より得られる形態病理所見を通して疾患の病態にアプローチできる分野でもあります。したがって、基礎医学の各分野と医療科学専攻の各臨床科との橋渡しとしても重要な役割を担っており、円滑な医学研究と臨床診療、医学教育に重要な責務を担っていると考えています。当病態病理学(病理学第二、臨床病理学)教室では、基礎病理学と臨床病理学の両輪をバランス良く稼働させることによって、我々の分野である病理学を推進すると同時に、長崎大学の医歯薬学発展に寄与することをモットーに日々尽力しています。
病理学は古代ギリシャより創始され、 Hans JanssenとZacharias Janssenらによる顕微鏡発明やRudolf Ludwig Karl Virchow (1821-1902)による「DieCellularpathologie」の発表など、沢山の先人達の功績が継承されて、現代病理学として成熟発展してきました。日本で最初の病理学は、長崎大学医学部の前身である「医学伝習所」にて、当時「原病学」と称され、Johannes Lijdius Catharinus Pompe van Meerdervoort (1829-1908)によって開講されたとされています。その後、Anthonius Franciscus Bauduin (1820-1885)とConstant George van Mansveldt (1832-1912) 、山根正次(1858-1925)、栗本東明(1853-1921)、鈴木立男、田代豊助、伊牟田八十次、林郁彦教授らに継承されました。1925年より長崎大学の病理学教室は二講座制となり、第二病理学の林郁彦教授、吉田富三教授、梅田薫教授、松岡茂教授、土山秀夫教授、田口尚教授へ、第一病理学の林一郎教授、池田高良教授、下川功教授へ継承されました。この度、歴史ある長崎大学の病態病理学(病理学第二、臨床病理学)の教授を拝命するにあたり、先代の先生方が継承されてきた「病理学の志」を理解し、長崎大学の全人的な医療職務、医学研究、医学教育を遂行し、特色ある地域医療と国際的な医学発展に全力を尽くす所存です。
令和7年3月吉日
長崎大学
医歯薬学総合研究科・病理学
教授 岡野慎士